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天国との会話
ジェームズ・ヴァン・プラグ
  
  
 

 

アメリカの有名な霊媒師が死者との対話を通じて死後の生について語ります。
この本は著者の写真が載っていますが、たまたまなのか、やはりこの手の人は目が独特な感じがします。
そこだけ光っているような感じで、魔術師クロウリーのポートレートを思い出しました。

この本はアメリカで長くベストセラーになっていたようで、こういう方面のアメリカ人の精神性は感心するべきなのか、
それとも危ういと思うべきなのかどっちなんでしょう。ともかく、宗教性にこだわるかのようなアメリカという国は興味深いものです。

このひとのいう死後の世界の描写ですが、どこまで信用して良いものなのでしょうか。
とりあえずは破綻は無いような気がします。
破綻が無いとは、これまで一般的に言われてきた事と大筋で外れるようなものはないということです。
もっともこういったことは言っている人によって少しは違いがあり、このひとは、転生してくる魂は前世などでなじんでいる職業につく
、と言っているのですが、(自分の過去生についても多くの似たような職業を列挙しています。)シュタイナーによると
魂はむしろ過去になじんでいない職業を選ぶということになっています。でも全体としては同じようなもので、
人類が共通して持っている何かを反映しています。

自分で作り上げたりした事を書いているならば、なにか違和感のある記述が気になると思うのですが、
そういうものはありません。もっともこのひとはこれまで多くの「死後の生」関連の本を読んだと書いてありますから、
そういったものをつぎはぎしている恐れというのはあるのですが、すべて自分の言葉として
こなれていて、ある程度のレベルはクリアしているのは確かなようです。だからこそベストセラーにもなるのでしょうが。

でもこういう人の常として、体験したり知っている事を述べるのは確信も持って、強さのようなものがあるのですが、
一寸深みのある洞察を述べようとすると、やや深みに欠ける嫌いがあります。
つい通り一遍のよくあることを言っているに過ぎないようなところが出てきます。
転生の仕組みにしたところで、神智学の用語や理論をそのまま持ってきているようで(転生のメカニズムなんて、まさに神智学的な説明です)、
いいのかなあ、と思ってしまいます。
もちろん体験した分の重みはあるのかもしれませんが、他にも例えば宇宙の”真理”の説明なんかのほうへ行くと
不満が残ってしまいます。
そういうのはまあ本当の宗教家に任せるべきなのかもしれません。

終わりのほうに、三つほど効果的な瞑想法が載っています。
地球のエネルギーを吸収する事と神聖なエネルギーの吸収その他についてですが、
ここもまた同じ弱点として素朴過ぎる気がします。一般向けなので簡略化したのかも知れませんが
それにしてもあっさりしたものです。深みに欠けています。

具体的な「霊視」もいろいろ事例が載っています。驚異的な内容なのですが
中にはテレビで公開したものもあり、少しは誇張や記憶違いが入っているとしても、
どうも事実であるのは間違いがないようです。
となるとこれ、いったいどう説明したらいいのでしょうか。

思いきって妥協するとして、このひとには読心術ができるのか、と説明してみる事が出来ます。
誰かが言った事ですが、こういった現象に、必ずしも霊が介在していると考える必要は無いわけです。
心を読むといったような超能力で説明できれば、死後の存在なんて考えなくていいのですが、
例によって、「依頼者」も知り得ない(死者しか知らない)情報が出て来たりして、このような仮説も意義をなくしてしまいます。

では、死者の残したなんらかの想念にこのひとがアクセスできる、と考えるのはどうでしょうか。
人の心を読む、という能力があるとすれば、このような能力があっても不思議ではないでしょう。
この考えの場合、障害となるのは、「死者」の言う事がいつも進行形というか、いきいきとこの「今」、
話しているとしか考えられないということです。「死者」は依頼者にいま起こっていることに気づいて
その事を話し掛けてきたりしますし、生前と変わらない冗談を飛ばし、
生前の行為を後悔して謝ってきたりすることが多いようです。
またこの著者に死者が語りかけてくるところの描写は、いきいきとして、いかにも奇妙です。
想念を読むのならば別の、もっと妥当なイメージが浮かんできても良さそうなものです。
さらに妥協して…死者の残した人格の”名残”のようなものにアクセスできると考えて見ることも出来ます。
が、この場合あの世の様子などを知らせて来たりするところが解せません。
ならば一番自然な解釈は著者の言う通り、死者が語り掛けてくる、というとんでもないものになってしまいますが
ここで多くの人は無意識に身を引くかもしれません。
もちろんこういったことはこの人の言っている事が嘘でないという前提があってのことなのですが。

霊媒としてのリーディングや、あの世の説明を読むといろいろ面白い記述が有ります。

不思議なのは死者が案外「墓」にこだわっていると言う事です。
もっともべつに墓の立派さなどの様子を気にしていると言うわけではなくて、
墓を前にして、生きている人たちが祈ったり、何かを供えたり、騒いだりしたことをよく覚えていて
話題として振ってくる事が多いのです。
死は存在しないと言う事や、あの世の事を話す様子から墓が重要だとはとても思えないのですが、
墓を通じて伝わる事が多そうで、妙なものです。
墓という故人をシンボライズする媒体によって、故人とのいわば連絡がスムーズに行くということなのでしょうか。

他にも生まれる前に行われる『エーテル会議』という、これからたどる人生の予定を大雑把に見ることが
行われると言う事や、カルマはバランスをとる、などと言った事など。
また題名が言う通り、「天国」の描写があったりしますが、これはいかにも典型的で、
一般に言われてるのに似て笑ってしまいます。
もちろん「天使がハープを弾いたりはしません」が、花の色がこの世の言葉では説明できないほど鮮やか
だとか、あらゆるものがそれ自体光を発しているとか、学習センターの話とか…我が家を建てることができたりとか。
ここらへんで一番引く人は身を引きますね。もっともとんでもないマンガチックな話題です。まあここは保留しておくべきかと思います。
記憶が定かでありませんが、ロバート・モンローの体外離脱三部作の第一作の天国の描写を思い出しました。
あの本も「段階」としてはかなり素朴で、似たような天国の描写をしていました。
あの世へ入っていくときには病院とか公園とか、あの世に慣れるための場所があるというところも身を引きそうですが、
これはロバート・モンローが後の巻で、体外離脱の中で発見した事と同じです。

というわけで、この種の本の歴史から逸脱しない、正統派?の”あの世”本だと思います。
 
 
 
 
 
 

 

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