YENは日本人を幸せにするか 吉川元忠 NHK出版 1997

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ちょっと畑違いの本。

でも最近はよく、これからの日本がどうのこうのというので、気になって読んだ。

バブルというのを振り返ってみると、結局あの日本の巨大な富は、アメリカを支えるために使われていたということに、なんか複雑な感じがする。いまやアメリカの大天下で、向こうは勝ち誇って大笑いしている。ソ連も消えてしまったし、反面教師を失った結果、あの野蛮なアメリカ式弱肉強食資本主義が、世界の標準となってしまった。
なんかいやだなーと思う。これがこのまま続くのだろうか。

この本を読むと、アメリカの経済はおよそ2010年かその辺に、遅かれ早かれ後退していくという。ベビーブーマーの消費行動が、初老期に入るために変化してしまうからだ。これまでは、ベビーブーマーが消費に回ることで、アメリカの経済を支えていた。
ところがそのうちにこの世代は貯金ををしていかなければならない。アメリカの赤字はまた増えざるをえないのだ。
少しは安心てしまう。「天の摂理」という言葉を思い出す。(??)

肝心のYENのほうだが、こちらはやがて現れる「ユーロ」通貨のために相対的に地位が低下するしかない。単なる、ローカル通貨になってしまうのだ。これは避けようがない。ドルとユーロという二つの巨大通貨が生まれれば、YENなど取るに足らない。絶体絶命である。

著者はここで大胆な提案をする。
いっそ「ユーロ」の傘下に入ってしまえ、というのだ。
ユーロに連動することで、その地位を確固とし、これに乗じて、アジアの基軸通貨に成ることができるだろう、という。
コバンザメ戦法である。
なんだかせこい。
しかしこの当たりのセコさこそが、日本の見分相応という気もする。

それに、どう考えても(素人が考えても仕方がないが)、こうするしか手がないようだ。詰将棋か何か見ているみたいで、他に手がない。

まあ、このようにすれば「どうにかなる」というところで、「手があった」ということ自体うれしいものである。

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