精神世界BON

  
 
エンデの遺言
根源からお金を問うこと
河邑厚徳:グループ現代
日本放送出版協会
未来を見るような ★★★★ シュタイナー経済学

NHK-BSでの番組を本にしたもの。
エンデがお金について考えたことをたどって、
お金も持つ意味に迫ります。
エンデの考えのベースになっているのはやはりここでもシュタイナーで、
その思想からさらに、ゲゼルなどの異端的な(でもケインズに評価された)経済学者
の思想などを付け加えていきます。
これがどんな金銭論かというと、一言で言うと、「時間とともに、価値が減っていくお金」
だと言う事です。
なぜなら金銭以外のあらゆる物も実は価値が減っていくからです。
そのなかで最も効率的に働くには、やはり金銭も価値が減っていかなくてはならないわけです。
価値が減らないという現在の金銭の硬直した体制が、さまざまなトラブルを引き起こしています。
それは動脈硬化のようなものです。
たとえば価値が減らないために人は金銭を溜め込もうとします。それでお金の流れが滞るのです。
あるいはこのような特性を利用して、投資のためのお金という実質が存在しない奇妙な
現象が起きてしまいます。

まえにシュタイナーの経済論を読んだことがありますが、びっくりしたのは、経済を解説するところにまで
イメージ的な思考を取り入れている事でした。
たとえば、プリズムの光などをイメージすることで、それを例えとして、あるべき
経済システムを説明したりしていました。変な例えでしたが、
そのようにして見ると、経済が有機的に動いている事が納得される感じがしました。
この一見奇妙な金銭論も、経済の有機的な流れを見るととても合点が行きます。

別にこれは机上の空論と言うわけではなく、
実際に歴史的に二十世紀初頭に行われて、うまく行っていた事があります。
ケインズはここらへんを評価していたようです。
もっと昔にも、中世のブロクテアーテと言うシステムや、古代エジプトでの例などがあります。
もっともこれらは必要に駆られて偶然に生まれてしまったものでした。
(たとえばエジプトでは穀物が保管されるうちに一定量痛んでだめになるので、保管してお金に換える者は
それ相応の負担を求められたわけです。)
重要なのは、このような体制下では、ひとは「長持ちするもの」に投資しようとするので、
価値のある建造物などが後世に残る事が多かったりするということです。
現代のように近視眼的に目先の欲を処理していくのではなく、
同じように欲に駆られてとはいえ、知らず知らず遠くを見とおすようになるのです。

現代でも地方の金券として同じような仕組みを組み込んでいる例がいくらか紹介されています。
まるで未来に必ず起こる事を想像しているようで、ちょっと愉快です。
 
 
中心感覚
一瞬のうちに本質をつかむ力 
内海康満
サンマーク
良くあるタイプの本 ★★ 人生論
ものの道理の分かったような人が、いろいろ言うという
よくある本です。
題名を見れば、だいたい何が言いたいのかはわかるでしょう。
いわば直感のようなものですべてを見ればうまくいく!という内容です。

ある道に秀でている人が言う事はやはり強い力があります。
このひとの場合はそれは武道とMRTという医術で、
そうした方面に関しては、いろいろと興味深いことを言っています。
たとえば腰の仙骨は宇宙のバイブレーションを受け止めるアンテナの役目をしてるそうです。
それは背骨を通じて脳の蝶骨へと受け渡されると言います。
二つは皿回しの皿と手元のように響きあっているそうです。
蝶骨からは脳下垂体などに伝達されいろいろなホルモンが分泌され、
その働きようは、仙骨によるバランスのとり方が反映されるわけです。
多くの病気を仙骨への刺激によって治していて、これを称してMRTと言っています。
巻末を見ると全国各地に支部があり、ぽっと出のいいかげんな療法でもなさそうです。
また武道に関しては、ひとにつかまれたということは一見そう見えるのとは違い、
つかむ人の動きの自由が奪われたということだ、など逆転した視点が面白いです。

こういった自分の体験から語っていく理論やエピソードは面白いのですが、
その一方で、一般的な話題になると、読んでてなんだか奇妙な感覚に襲われます。

身の回りのこまごまとした体験から説き起こす事は納得がいくのですが、
もっと大きい事、例えば社会情勢を憂えたり、真理のような一般法則を説こうとすると
不思議と、とたんにずれてしまいます。

例えば、人種差別がいけない理由は、いずれ人類が混ざって一種類になるからだ、などと言っています。
人種差別がダメな理由としては
ちょっとさすがに無茶です。というか、ずれています。
他に、ピカソの作品は中心感覚からずれているからだめだ、とか
総理大臣は日給一億円で良い、とか、立候補制度を無くして全員投票制にせよ
とか、結婚はお試し制度にしろ、とか
どこか分かるようで分からない、それこそ中心感覚からずれている事ばかり言って
とまどわせます。

ひとに感心されるためにはあくまでも自分の体験した事をもとに喋るべきだなあ、
というのが今回の私の収穫でした。
 
 
 
悪と往生
親鸞を裏切る『歎異抄』 
山折哲雄
中央公論新社
"弟子は裏切るもの" ★★★ 仏教

この人の本は、エッセイ風のばかり読んでいたので、
いつもと違う書き方にちょっとびっくりしました。
力をこめて、芝居がかっていると思わせるほどに感情も込めて書いているので
こういう面もあるんだなーと感心しました。

肝心の内容は仏教の歎異抄についてですが、こっちのほうは詳しくないので
いまいちピンときませんでした。
「善人なおもちて往生をとぐ。いわんや悪人おや。」で有名ですが、
ほかにも三つばかり有名な逆説じみた警句があるそうです。
それらはなにかとよく引用されるのですが、
しかしそれらの逆説も実は逆説にいたる経緯があるのであり、
そこだけひきだして振り回すのが誤りである事が分かります。
弟子の唯円がはしょってしまったのです。
 

 

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