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精神世界BON
問いの徹底度において、こんなに潔癖な人も珍しい。 まさに原初こうだったんだろうな−と言うようなの哲学の形を体現しています。 で、なんでこれが「精神世界もの」かというと、 ここまで問いが徹底されてしまうと、ほとんど神秘主義の世界と接してしまうからです。 たとえば宇宙がいつできたかと言う話では、 いつできたかと言う事を考えている〈私〉がその「始まり」を考える図式のナンセンスさを笑ったあげく、 「宇宙はいま、ここで生まれているのだ」と結論せざるを得なくなるのですが、 この言葉はまるでエックハルトが言っている言葉かと思ってしまいます。 「私は世界を認識する。私なくして世界はない。だから私は消える事はない。」と言うような意味の事 (ここまで露骨には言っていませんが)もまたラマナ・マハリシと重なってしまう。 問いをごまかさずに突き詰めるとみな同じ結論へといたるらしいです。
その制限された条件下でどの程度独自性を出せるかということに なってしまうように思います たいてい、困難な状況下にある主人公が、(なかば強引に現れる)超越的な世界の知恵に通じた「師」との 出会いを通じて賢くなっていくという形です。 はっきり言ってストーリーなんかはどうでも良く、 文中で〈師〉が長々と説明する意味ありげな言葉のみに意味があるようです。 だからニューエイジ小説の小説としての出来の差をつくるのは 道具立てのユニークさのみにかかっていると言えます この意味で、この小説は 「天界」にあるバーだかなんだかが舞台と言う事で(そこで超越的な『師』と会う) 面白い事考えた、と思います。 でもいつもこうした設定に無理が生ずるのか
伝説を元にしているので、細かな描写などぼんやりしているような感じ。 伝説というのは単純ながら残酷で…この残酷さが心の深い奥の動きを思わせる…、 力強いものなのだな−と思う
これはVOICEの持つ雰囲気のせいでそう感じるのかもしれません。 特徴的なのは 自分の望みに順位をつけるな、
というようなあたりでしょうか。 ところで、やはりここでも頻繁に出てくる
女性である事の問題などが中心的な話題のひとつではあるので、 もしかすると女性向きなのかもしれませんが、それ以外の話題も興味深く、 うまいオチをつけるところなど 小説としてかなりできが良いです。 この小説が多くの出版社に断られたというのはなぜなのだか良くわかりません。 ネイティブと結婚したとかいう著者の経歴のせいか 、なんといってもインディアンの思想が皮相的にではなく、 深く理解されているところがいいです。 老女の言葉の深みは、よほど理解しているのでないと書けないほどだと思います。 映画化決定!とありますが、この内容を画面に反映させるのは結構難しいでしょう。
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